JP_Stripes Osaka #16 で「AIエージェントの決済」というテーマで25分話しました。
AIと決済は2025年は有料MCPのPoCなどで注目を集めるテーマでした。2026年になってさらに多種多様な決済のアイディアや規格が登場したので、それをStripeが関わる範囲でまとめています。
エージェントの決済をシナリオで整理する
AIを使った購入・決済フローはおおよそ3つのパターンに整理できます。
- 商品を探して買う
- デジタルコンテンツを購入する
- SaaS・サブスクの決済を行う
ACP / SPTで商品購入をエージェントに委任する
ChatGPT に「赤いダウンジャケットを5万円以下で買って」と頼むと、エージェントがマーチャント側の API を叩いて商品を選び、カートを作り、決済まで完了する。これが AI で実現する決済体験として最もシンプルなものです。
これを実現するための規格やStripeの機能として、 ACP (Agentic Commerce Protocol) と SPT (Shared Payment Tokens)があります。
ACP がエージェントとマーチャントの会話のプロトコル仕様、SPT がエージェントに支払い権限を渡すためのトークンです。これらの仕組みは、「エージェントは買い手の代理だが、買い手のカード番号を持ちたくない」というAIによる決済体験におけるジレンマの解決にあります。SPT は、カード番号自体は露出させずに「このマーチャント・この金額・この期限内」だけで使える限定スコープのトークンを発行する仕組みです。Stripe が裏で SPT からカード本体に変換して決済する。エージェントもマーチャントも、実物のカード番号は一度も見ません。
x402 / MPPでデジタルコンテンツの決済をエージェントに要求する
デジタルコンテンツの場合、エージェントが有料コンテンツであることを判別し、どこに支払えばいいかを理解できる仕組みが必要です。
ここで動くのは x402 と MPP (Machine Payments Protocol) です。x402 は Coinbase が設計し Cloudflare が共同推進する暗号通貨ベースのプロトコル、MPP は Stripe と Tempo が共同制作した上位プロトコルで、x402 を内包しつつカードや BNPL も通せるマルチメソッド版です。
curl で API を叩くと、サーバーが HTTP 402 Payment Required を返してきます。クライアントがウォレットで署名し、X-PAYMENT ヘッダーを付けて再リクエストすると、ファシリテータが裏で USDC の決済を実行し、サーバーがコンテンツを返す。このようなフローを x402やMPPが実現します。
これを試すにはBase Sepolia テストネットを使います。テスト用 USDC をファウセットで取得し、purl で支払いを完走できます。実際に手元で動かした手順は別記事にまとめてあります(Cloudflare の x402 テンプレートをローカルで試す、Workers にデプロイする)。
SaaSの選定や申込をStripe Projectで集約
SaaSを組み合わせたサービス開発では、技術選定やアカウント作成・契約処理・APIキーの取得などの作業がそれぞれ発生します。これらを探索が得意なエージェントに任せる仕組みも、プレビュー版ながら登場しています。これは Stripe Projects です。「Stripe を介した AWS Marketplace」と表現するのが伝わりやすいかもしれません。AWS マーケットプレイスが「AWS アカウントがあれば SaaS の支払い・アカウント管理を集約できる」のと同じ構造で、Stripe Projects は「Stripe アカウントがあれば」を提供します。
stripe projects init my-app を叩くと、ディレクトリに .projects/、.agents/skills/、.claude/skills/、.cursor/rules/、そして AGENTS.md と CLAUDE.md が自動生成されます。次に stripe projects catalog を叩けば、Cloudflare Workers / Vercel / Supabase / Neon / Hugging Face など32プロバイダー、45サービスのリストが返ってきます。エージェントがこの中から必要なサービスを選び、アカウント作成と契約まで完了させてくれます。
CLI 操作、catalog の確認、無料プランの契約と API キー発行までは日本のアカウントでもできます。有料プランへのアップグレード契約は、2026年4月時点で日本ユーザーは未対応です。内部的には SPT 経由でプロバイダーに支払う仕組みで、SPT 自体が US 限定であることに起因します。
まとめ
AIエージェントの決済を理解する第一歩は、製品名で追いかけるのをやめることだと考えています。ACP / x402 / Stripe Projects は、それぞれ別のレイヤーで動く別の解です。先に「誰が、誰に、何のために払うか」で3層に切ってから、各層に各機能を割り当てる順序の方が、理解の歩留まりが圧倒的に良くなります。
そして、日本から触れる範囲は意外と広いです。Layer 2 (x402) と Layer 3 (Stripe Projects) は今夜から実機で動かせます。Layer 1 (ACP / SPT) は仕様読みと merchant 側の PoC まで進めておけば、来たときに即動けます。マネタイズも、Meter API で「使った量」を測る準備を今から始められます。
Stripe Sessions 2026 全体の発表概要は公式ブログからどうぞ。