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[ Stripe Sessions 2025 セッションレポート] プログラマブルに決済・収益エンジンを実装する

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Stripe Sessions 2025 のプロダクトキーノートでは、 Stripe のサブスクリプション商品「 Stripe Billing 」についても複数のアップデートがありました。この記事では、アップデート内容だけでなく、キーノート内で紹介されたトピックについても紹介します。

2024 年から Billing とその環境はどうかわったか?

2024 年の Stripe Sessions では、 生成 AI などを利用したサービスでの利用に対応した新しい「使用量ベース課金(Usage-Based Billing)」を発表しました。これは毎秒最大 10 万イベントを処理することができ、リアルタイムの使用量に応じた課金を実現できる新機能でした。

この機能がリリースされた後、多くの企業はさらに一歩進んだ課金モデルを模索していたことが判明しました。例えばIntercom では、「作成されるサポートケース数」に基づいた成果報酬型の課金モデルの「 Fin AI Agent 」提供開始しました。このような実際のビジネス成果に基づいた課金を実現したいというニーズが企業にはあることが、前回の Stripe Sessions から今回の Sessions 開催までに判明したことだということです。

また、多くのSaaSやAIサービス提供企業は大きな課題を抱えています。それは収益の予測可能性です。顧客獲得を加速するために企業は無料使用枠を提供したり、無料で試す間は支払い情報の入力を省略したりすることがあります。しかしこのような施策を行うと、生成 AI などの使用量ベースで提供するサービスにおいては、リアルタイムでの使用量の追跡やそれに伴うスムーズな請求の開始が難しくなります。また、決済情報の入力がないため、無料プラン・トライアルからのコンバージョンが難しくなるなどの問題があります。結果として企業は収益の予測や顧客の使用量把握が難しくなります。また、顧客の視点でも、無料使用枠を超えた際に突然サービスが停止されたり、予期しないタイミングで支払いが発生したりすることで、サービス利用体験が損なわれる可能性があります。

このような企業の課題に対応するため、Stripe は決済や請求体験とワークフローを拡張する新しいプリミティブを 2 つ発表しました。

Product Keynote で発表された Billing 関連の新機能

1. Stripe Workflows – ノーコードに実装できるワークフローエンジン

1つ目の新機能は、ノーコードのワークフロー機能「 Stripe Workflows 」でした。これは Stripe 内のワークフローをビジュアルエディタで構築・デプロイ・デバッグできる機能で、決済や請求管理に関するワークフローをコードなしに実現できるようになります。

これまでStripeの機能をカスタマイズするには、APIとWebhookを使って独自のコードを書く必要がありました。そのため、開発リソースの確保やコードの保守管理など、業務を効率化するための事前調整が何ステップも必要でした。しかしこの Stripe Workflows を使うことで、これらの調整なしにワークフローを構築・テストできるようになります。

ワークフローはトリガーベースで実行でき、使用量アラート・支払い失敗・サブスクリプション更新など、様々なイベントから実行できます。また複数のアクションを順番に実行したり、条件による分岐も可能です。

その具体的なユースケースとして、多くのSaaS企業、とりわけAIサービス提供企業が直面するフリーミアムモデルにおける請求管理フローの効率化が挙げられました。ユーザーに無料枠を提供し、サインアップ時に支払い情報を必須としない場合、ユーザーが無料枠を超過した際に、サービスを停止するか、あるいは無料で提供し続けるかの選択を迫られるという課題があります。

Stripe Workflowsはこの課題を解決するために活用できます。Stripe Billing機能で使用量アラートを設定し(例:500トークン)、そのアラートをWorkflowsのトリガーとすることで、一連の請求プロセスを自動化できます。Workflowsはトリガー後、自動的に顧客情報を取得し、顧客が支払い情報を登録済みであるかを確認します。支払い情報がある場合は、自動的に請求書を生成・請求し、サブスクリプションを自動設定することが可能になります。

このように、Workflowsを活用することで、ユーザーはサービスの中断なく利用を続けられます。ビジネス側も請求対応で遅延が生じない上に、顧客体験を損なわずに有料モデルへスムーズに移行できるようになります。これは、企業がこれまで自社で構築していた煩雑なプロセスをStripeにオフロードできる機能としても強調されました。なお、WorkflowsはBillingだけでなく、Stripe全体で使用可能です。

2. Stripe Scripts – Stripe自体をカスタマイズ

2つ目のアナウンスは、「 Stripe Scripts 」です。これは企業固有のロジックに合わせてStripe自体の動作をカスタマイズできる機能です。Stripe Billingのコアエンジンを含む様々な機能を変更でき、従来はカスタム開発が必要だった課題に対応します。

デモでは割引設定のカスタマイズが紹介され、100トークン以上で10%、200トークン以上で20%というボリューム割引をコード実装する例が示されました。テンプレートから選択することも可能で、作成したコードはStripe内でホスティング・実行されます。

この機能の特長は、WebhookやミドルウェアではなくStripe内部で直接動作する点です。Workflowsが製品間連携を定義するのに対し、ScriptsはStripeの内部動作そのものを変更できます。将来的には、日割り計算や請求書発行など、Billingの様々な側面をカスタマイズできるようになる見込みです。

3. Stripe Tax がグローバルに対応した大幅アップデート

また、Stripe Taxの大幅な機能拡充も発表されました。対応国が57カ国から102カ国へと拡大し、多くのユーザーから要望のあったグローバル税登録と申告機能が新たに追加されています。

Stripe Taxは税金管理のプロセス全体をカバーし、監視から登録、徴収、申告までをエンドツーエンドで提供します。複雑な国際税務コンプライアンスを自動化することで、企業はグローバル展開をスムーズに進めながら、法令遵守も確実に行えるようになりました。

AIビジネスにもたらす重要な意義

今回のアップデートは、AI を利用したサービスを提供する企業にとって大きなインパクトがあります。Cursor、Perplexity、OpenAI、Anthropic、DecaGon、11 Labs、Midjourneyといった著名なAI企業がすでにStripe Billingを採用しています。また、NVIDIAに至っては、わずか6週間で全サブスクリプションをStripe Billingへ移行させたとのことで、セッション内にてこの数字が発表された時は会場内に驚きの声もあがりました。

AIビジネスは独特の課題を抱えています。トークン数や推論時間などに基づく複雑な課金モデルが必要となることがあります。また、新しいモデルや機能が頻繁に追加され、価格体系も絶えず変化します。さらに、無料プランを利用する個人から大規模な契約を結ぶ企業まで、幅広い顧客層に対応しなければなりません。

このようなAIビジネス特有の課題を、今回発表された3つのアップデートは解決します。Workflowsはリアルタイムの使用量監視に基づいた自動アクションを可能にします。Scriptsを使えば、複雑な割引ルールなど、企業独自のビジネスロジックをコードで実装でき、カスタマイズが容易になるでしょう。機能が拡充されたStripe Taxは、グローバル展開における複雑な税務コンプライアンスの自動化をサポートします。これらの機能によって、AI企業は収益管理の複雑さから解放され、より速い成長を実現できるかもしれません。

今後の展望

Stripeの最新アップデートは、収益管理のあり方を根本から変える可能性を秘めています。特に急速な進化を遂げるAIサービスのような分野では、WorkflowsとScriptsという2つの強力な拡張基盤が競争力の維持・強化に不可欠になるかもしれません。

Stripeが真のプログラマブルな収益エンジンとして、各企業のビジネスに合わせた柔軟なカスタマイズを可能にした今、これらの新機能を活用して収益オペレーションを次のレベルに引き上げる絶好の機会が訪れています。

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